人類が造りだした最初の調味料である酢は、疲労回復や食欲増進、老化や肥満および糖尿病などの防止になるものとして、人々に食されてきました。まさに「寿」と言いたくなるほどの万能調味料は、古来より人々の健康を支えてきた民間薬と言えるでしょう。
この酢を今も変わらぬ伝統の古式醸造法で造り続けているのが、那智勝浦町にある丸正酢醸造元。
ここで造られている酢は、国内はもとより世界中の有名な食通やシェフにも認められており、中でも「那智黒米酢」は品質の良さが高く評価され、2007年度のモンドセレクション特別金賞をいきなり獲得。また2008年度にも最高金賞を受賞し2年連続金賞受賞の快挙となりました。またiTQi(国際味覚審査機構)の優秀味覚賞などを受賞しています。
明治12年に創業した丸正酢醸造元 3代目社長 小坂晴次さんは、2代目の父から醸造法をたたきこまれてこの道60年以上のこだわりの職人さん。
米の炊き方・蒸し方から、麹づくりや植え方など「手間ひまをかけた昔ながらの酢づくり」を行い、500日にも及ぶ熟成期間を経て完成する酢は、香りが立つ、コクがありまろやかな味の古式醸造の手造酢です。
こだわりはもちろん原料にもおよび、自家製の低農薬米や各製品に配合される原材料のほか、酢づくりの命である軟水は、蔵内の井戸から湧き出る日本一の那智の滝と同じ熊野山系の伏流水を使用した酢づくりを行っています。
丸正酢醸造元の名が広く知られるようになったのは、マクロビオテックス(自然食健康法)の世界的権威より依頼された「もち米の玄米の酢」の開発がきっかけでした。
もち米は、ねばりが強いうえ蒸しにくく、麹菌が活着しにくいため、酢を造るのは無理だと言われていましたが、小坂さんはこの依頼を苦心の末1年がかりで完成。これが健康ブームであったアメリカを中心とした15カ国に広まり、料理界・政財界や芸能界まで「世界でもここだけにしかない、最高級の酢」として認められました。
しかし急速に広がる需要に対して、生産が追いつかない状態となったため、丸正酢醸造元は苦渋の末に限定生産を決断をします。それは「利より質をとる」職人のこだわりと、古式醸造手造法を守るものづくりの自信。この決断は、かえって品質への評価を高めることとなりました。
実は、この決断は過去からの教訓でもあったのです。

今でこそ「こだわりの酢づくり」として名高い丸正酢醸造元ですが、昭和40年ごろ廃業の危機に陥った時がありました。
その原因はドイツから日本に入ってきた速成醸造機。この機械はわずか24時間で酢を造ることができ、安価な速醸酢がスーパー等に出まわりはじめたのです。また木桶に変わってホーロー製のタンクが登場したのもこの頃で、大手企業の進出や大量生産などにより、和歌山県内にあった酢の醸造所は四分の一にまで減ったのだとか。
丸正酢醸造元も苦戦を強いられ、廃業か、新しく機材を導入するかという判断を迫られました。
この時まだ若かった小坂さんの決断は、
「今まで通り昔の方法で造ろう。」というものでした。
速成醸造機により製造された酢の味・質は言うに及ばず。ホーロー製のタンクは杉の桶に比べて全くの欠損がないものの、「酢の命」である香りがなくなっていたのです。本物の酢を求め、特に「立ち上がる芳香とコクあるまろやかな味わい」にこだわる小坂さんは導入をやめ、消費者に対して正面から向き合う道を選びました。
「利より質を重んじよう。」
手づくりの醸造酢の良さを知ってもらおう。本当に良いものだけを作って行こうと、小坂さんはこの時「腹を決めた」と言います。
那智勝浦町に限らず、和歌山県は今でも頻繁に家庭で寿司が作られ、家ごとに味にこだわりがあって酢の消費量も多いところ。
消費者に本物の酢を提供し続けることこそが、自分たちのものづくりであり、また、本物の味はきっとわかってもらえるはずだと地域をまわって醸造酢の良さをアピールし、理解を深めてもらう努力を重ねました。
この時の決断と苦労があればこそ、今の丸正酢醸造元さんがあるのかもしれません。
歴史ある蔵の歴史、受け継がれた酢づくりの技に、醸造方法を変えないという信念が、この時加わったのかもしれません。
酢づくりを始めてこの道60年の小坂さんは、今も「酢は生き物」だと言います。
創業当時のままに、窓明かりだけの木造醸造蔵には、 高さ2m、厚さ5cmの熊野杉の古木で作られた12の杉桶が並びます。
相撲好きの祖父の代から歴代の大横綱の名前が付けられ、酢を発酵させる温度に保つため「こも」を被せた一つひとつを、小坂さんは覗きながら、 酢の息吹を聞く確かめて行きます。蔵や桶に住み着いている上質の酢酸菌はみな生きており、こもかぶりの桶の中では今も醸造酢が静かに育っているのです。
この木造土間の醸造蔵に入るとき、小坂さんは神棚に手を合わせ、そして清めた手でほら貝を吹き心身統一を行います。自然と語り合う心構えをするための、小坂さんにとって精神統一の儀式なのです。
小坂さんは言います。「私はつくづく職人だと思う。しかし妻や家族、従業員が私に足りないものをサポートしてくれているんです。」
百貨店で販売するとなれば、奥さんが中心になってお客様に製品の良さをアピールします。普段酢づくりの現場を見て、苦労や難しさをわかっているからこそ、販売にも説得力が出るというもの。また海外での交渉や経理・財務などの面では、娘さん方が一体となって行っています。
そして、酢づくりに対しては、様々な業務を行ってくれる蔵子さんはもちろん、いつか四代目となる息子さんが小坂さんをサポートしています。
全世界で認められている丸正酢醸造元の製品は、今では多様化する消費者のニーズに応え、少量づつながらぽん酢や寿司酢など、20種類以上の酢を製造。最近では米黒酢、熟成黒ニンニク、米麹を丹念に調合し発酵させ、ニンニクと酢の効用を合体させた無添加「熟成ニンニク酢・元気」を開発し販売を開始しました。
「蔵の窮地を救ってくれた人たちはもちろん、お客様に喜ばれるものを。うちだけにしか造れない酢を、これからも造って行きたい。」
その言葉に気負いはありません。
とても気さくに出迎えていただき、お忙しい中、長時間に渡ってお話を伺わせて頂きました。技を極めた職人がもつ自然体。それが小坂さんにお会いした感想です。
その居心地の良さは、アットホームという言葉がぴったり。酢づくりはみんなが一体となった丸正酢醸造元さんの家業です。苦労を乗り越え、消費者と向き合ってきた小坂さんご一家だからこそ、人との出会いやふれあいを特に大事されている。そんな気がします。
※ご希望の商品の詰め合わせを2本・3本・5本入りのギフトセットとして承ります
店主からひと言
当社の製品はすべて水や原料にこだわっています。手づくりゆえに少量づつの出荷ではありますが、本物のおいしい酢を求めるお客様にお届けできるよう、これからも全力で努力して参りますので、よろしくお願い申し上げます。
※掲載の商品はすべて取材時点のものです。

那智黒米寿(300ml) 1,575円

黒にんにく黒酢(300g)
2,625円
※元気くん(1個)
500円

ちゃんぽん酢(300ml) 735円

熊野の酢(300ml)630円

寿しの酢(300ml)575円

さんばい酢(300ml)575円