コンビニエンスストアの大手 セブン・イレブン・ジャパンで2008年10月より販売されたのが、県産品を使用した「和歌山県産鯛のかま焼きと梅あんかけ煮物のお弁当」。和歌山県串本産の鯛のアラと、そのアラのだしを使った押麦入りご飯、和歌山の南高梅や人気のある和歌山のしらすなど22品目の食材を使ったおかず9種類が彩り豊かに盛り込まれたお弁当です。
この「食育応援弁当第三弾」なるお弁当を開発したのは、和歌山県とセブン・イレブン・ジャパン。そしてわかやま産品パートナーズ制度を結び、今回の開発に尽力したのが和歌山信愛女子短期大学の生活文化学科で食物栄養を専攻する学生さん達です。
統括した同大の准教授であり、和歌山県栄養士会会長でもある藤澤祥子先生にお話を伺いました。
「お弁当の開発は学生達にとって楽しい勉強だったようで、彼女たちを成長させてくれました。」と藤澤先生。
和歌山県とセブン・イレブン・ジャパンの提案のもと、みんなでモニターとして意見を出し合いながら、最後まで「梅干しの酸味」や「副菜の変更」「甘みの低減」などにこだわりました。塩分は控えめで野菜を多めに、栄養バランスを考え、見た目の豪華さやボリュームを保ちながらエネルギーは611キロカロリーに抑えています。

このお弁当のテーマは「お父さんに食べてもらいたいヘルシー弁当」。ヘルシーやメタボリックシンドロームという言葉が叫ばれる現代において、そのテーマは当たり前に聞こえるかもしれません。しかし先生方には、さらに"その先の食育"への希望がありました。
「和歌山県で採れる産品を知らないお父さんに対して、わが和歌山県のことをもっとよく知って欲しいという気持ちもあります。」
食育と言えば、みなさんがよくご存じなのは幼稚園から小学校にかけて給食で実施されている取り組みでしょう。しかし本当の食育とは子供だけではなく、すべての年齢に各々対応すべき食育があります。つまり家族や地域が一体となって取り組む必要があると言うこと。
わが県の食・食材を知り、それを伝え、守っていくために。そして健康な生涯をおくるために。個人個人がしっかり考えていかねばならないのだと思います。
和歌山県では食の安全確保推進プロジェクトの実施や食生活指針策定など、食に関するさまざまな取り組みを行っています。その中のひとつに「早寝・早起き・朝ごはん」運動というものがあります。これは文部科学省から全国におろされたもの。
「朝ご飯を食べるか食べないかでは、反射的な判断や行動に、歴然とした差が出てくることが調査でわかっているんですよ。」と先生。
ご飯の糖質は脳の栄養となりますし、また3歳までに食習慣の基本として大切にしたい。と言う位置づけから、この習慣を付ける目的があるということでした。
国民栄養調査によれば、現在朝ご飯を食べない子は中学生で4.4%、小学生で1.7%いると言われています。「早寝・早起き・朝ごはん」運動は、この比率を2010年度までに和歌山県全体でゼロにしようという食育の一環です。
「幼児の食育を行うのはもちろんのこと、家族がみんなできちんと食事を取ることが大事です。」
"孤食"という言葉があります。孤食は一人一人がそれぞれの好きな時間に食べようとする問題で、引きこもりの第一歩とも言われています。
仕方がないと思う保護者もいらっしゃるかもしれませんが、
例えば学校給食では
「みんながいろいろしゃべりながら食べているのが楽しい。」
「くだらないことを話しながら食べても誰も怒らないから。」
「みんなが笑って食べているから楽しい。」
という子供がいます。
「孤食という言葉が1980年代には既にあったことを考えると、今の子供の親御さん達が孤食の時代を経験しているのかも知れませんね。」

塾通いする子供や残業で夕食をとれない親。現代では家族全員が共に食卓を囲むためには努力が必要です。しかし、口うるさいから食事を一緒にしたくない。楽しくない。と思われるのは寂しいことです。
今日学校であったことを長くてもきちんと最後まで聞いてあげる。叱らず、褒めることを考えてあげる。そして今日の夕食の話や今度の週末の話をするなど、家族がみんなで楽しむ団らんを、食卓にこそ求めていくべきではないでしょうか。年齢の小さい子供も、大きい子供も家族みんなで一緒に食べたい。と言っています。
また、藤澤先生は現在の家庭の食卓は"洋風化"したのではなく、"洋風に飲み込まれた格好"だと言います。
「現代は、洋風の良いところを取り入れた"欧米化日本食"ではなく、食材も調理方法も洋食そのものの"欧米型日本食に"なってしまいました。どういう事が問題かというと、アメリカやイギリスなどで問題になった生活習慣病、つまり今で言うメタボリックシンドロームなどの蔓延です。それに気づいた彼らは"食"に気をつけるようになり、今では豆腐や大豆などの日本食を取り入れているのです。」
日本を取り入れた洋風。対して洋風に飲み込まれた日本という構図。
私たちは今一度、日本食を見直してゆく必要があります。そのお手本となるのが、私たちの身近で生産される産物を使った郷土料理でしょう。
和歌山の郷土料理は以前ほど日常生活で作られなくなってしまいました。
「私もお手伝いさせていただいた『紀州わかやま食事バランスガイド(和歌山県農林水産部農業生産局発表)』には、郷土料理を含むレシピを掲載しています。」
「これを参考にすることで、あらためて郷土色の素晴らしさ風土と結びついた食のあり方などの見直しにつながることを期待しています。」
(紀州わかやま食事バランスガイドはPDFでご覧いただけます→)
教職に 会長職にとお忙しい藤澤先生ですが、地域で行われるイベントなどにも精力的に参加されています。主婦達が作る地域で採れる産物を使った新しい料理の発表会もそのひとつ。地域ごとの食に対するイベントがさらに発展し、まちぐるみの取り組みになれば、食に対しての広がりが出てくるに違いありません。
和歌山県で育まれる産物には、日本一の冠をいくつも持つフルーツはもちろん、栄養素の高い野菜等が栽培されています。また魚介類においてもマグロのような大型魚から味の濃い小魚、そして海藻と、品質に優れたさまざまな食材にあふれています。
この恵まれた県から食の大事さや尊さを発信していくことは、とても意義有ること。食を根本にした教育や取り組みを行っている藤澤先生。同大に協力を依頼した和歌山県。そしてお弁当に骨付きの魚である「かま」を入れる決断を下されたセブン・イレブン・ジャパンに、私たちは最大の賛辞を贈りたいと思います。

「和歌山県産鯛のかま焼きと梅あんかけ煮物のお弁当」パッケージ

和歌山県串本町産鯛のかま焼きは骨の回りが特に美味しい

鯛のだし汁で炊いた押麦入りのごはんは、味わいたっぷり

和歌山県の新鮮なしらすをふんわり卵でとじました

大粒の低塩(5%)南高梅を、贅沢にまるごと1個使用しました

南高梅の梅肉であっさり仕上げたあんかけの煮物

国産鶏ささみの辛味和え