紀州の寿司文化

木の国和歌山で好まれた、山のお寿司

江戸前寿司といえばネタの活きを競うもの。山林が7割をしめる木の国和歌山では、地域の家庭ごとに保存食としての寿司が作られてきました。海岸周辺の場合豊かな海から採れる活きの良い魚はそのまま刺身やたたきなどとして食されるのが当然ですが、海から離れた山間部でも魚を食べることが出来るよう保存食として作り伝えられた寿司が多いのも紀州の寿司の特徴です。

風土が広い紀州にはさまざまな寿司があります。ネタと飯の組み合わせはもちろん葉と料理方法によってできるのは、葉っぱでくるんだ寿司や葉っぱを敷き詰めた寿司、殺菌効果や臭み消しとして使った葉っぱと魚の組み合わせによって異なる味覚、そして文化。また箱でおした箱寿司やおまぜなど、千差万別です。

なれずし特に有名なのが日本三大なれずしのひとつとして名高い「なれずし」。なれずしは酢を使わない寿司の原型と言われる寿司で、粗塩をした「スシナ(ネタ)」と白米に塩をした「すし飯」を、アセ(暖竹)の葉で巻き重石をして自然発酵させたもの。強い乳酸の発酵臭を伴うなれずしは別名「熟寿司」「くさりずし」とも言われ、古来よりその独特の風味にたちまち魅了された人が後を絶ちません。

なれずし発祥の言い伝えとして、源平の頃に平維盛(たいらのこれもり)が有田地方に籠もった時、兵食として珍重した話が残っています。またこの説の中で「平維盛=弥助」と言われることから「弥助寿司」という名前の寿司屋が多いのだとか。

ふたつのなれずし

実は和歌山にはふたつの「なれずし」があります。すでにご紹介した「サバとアセの葉」を使った有田地方のなれずし。そしてもうひとつは熊野地方に伝わる「サンマとシダの葉」のなれずしです。

熊野地方のなれずしに使われるサンマはその名の通り「秋刀魚」ですが、面白いのはサンマは回遊魚であるため、三陸沖から和歌山県の熊野地方に来る晩秋のころには「脂がほどよく抜けた身が締まったさっぱりしたサンマ」になることです。このサンマは寿司にするとクセがないため、なれずしにする際にサンマを使うことが定着し、技法と地域の食材が合わさった郷土食となったといえるでしょう。

伝わる葉っぱの違い

昔はどの家庭でも作られていた寿司。秋祭りや晴れの日にはどの家も競って数を競うほどだったとか。当時は「近くに自生していた葉っぱ」を使ったのでそれぞれ葉が異なっているのが楽しいところ。橋本では「柿の葉」、高野山では「笹の葉」、有田では「芭蕉の葉」や「アセの葉」や「わさびの葉」、南紀〜熊野方面に行けば「柏葉」なども使われました。比較的新しいところでは「野苺の葉」や「海草」で巻くなど、地域によって特色豊かな寿司が残っています。

なれずしそして山の寿司といえば郷土料理100選にも選ばれている「めはりずし」。熊野地方の険しい山の農作業で食べる弁当として始まったといわれるめはりずしは、高菜漬けの茎を刻んでごはんにまぜ、高菜の葉でくるんだおにぎり。「目を見張るほど大きい」から名付けられたと言われています。

もちろん海のお寿司も新鮮でうまい

そしてもちろん和歌山の新鮮なネタを使った寿司も見逃せません。サバやサンマはもとより、アジやカマス、サワラやタチウオなど、海に面した和歌山でのみ味わえる寿司は地元だけの特権でした。

その中で加太の桜鯛を使った寿司は、まるで雀が踊っているかの姿から、時の紀州藩主「徳川治宝」によって名付けられたと言われています。また、和歌山を縦横無尽に流れる清流にすむアユ、アマゴやジャコが使われるなど、全国の中でもこれだけの寿司のバリエーションを持つ和歌山はまさに「寿司の国」だと言えるでしょう。



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